就業規則の問題点
「就業規則を作ったのに実務で使えない」と感じたことはありませんか。
例えば、就業規則に定めた解雇事由や懲戒事由に基づいて解雇や懲戒処分を行った場合に、労働者が不服として労働基準監督署に申告したり、裁判に発展したりすることがあります。
このような場合、会社が不利な立場に立たされることが少なくありません。
会社としては「就業規則の記載に沿った処分をしただけなのに」と感じてしまうことがよくあります。
この問題の原因は、しばしば就業規則の内容にあります。
日本の現行労働法制では、法律の表現は抽象的で画一的なものが多く、具体的な考え方や判断基準は過去の膨大な裁判例に基づいています。
そのため、就業規則も法律の文言に沿った記載だけでは不十分であり、過去の裁判例を踏まえた具体的な内容にしなければ、実際の労務トラブルに対応できなくなってしまうのです。
主な原因は2つ
抽象的な法律表現に基づく就業規則と、裁判例を意識した内容の就業規則との違いは、次の2つの視点が意識されているかいないかに大きく依存しています。
この2点の意識が薄い就業規則に基づいて会社の行為が行われた場合、会社に不利な結果となることがあります。
- 解雇権濫用法理
- 合理的限定解釈
これらの視点を簡単に説明すると、法律上は会社の権利として認められる行為であっても、裁判所や労働基準監督署から「それはやり過ぎ」と判断され、一定の制限がかかることがあります。
例えば、「解雇事由」や「懲戒事由」は、原則として会社が自由に定めることができる権利ですが、実際の運用において、「労働者の起こした問題と比較して、その処分は重すぎる」と判断され無効とされることがあります。
これは、会社が権利を濫用したとして解雇権濫用法理に該当します。
また、会社が規定した就業規則の内容が広すぎる場合、例えば「兼業・副業を全面的に禁止する」という規定について、裁判所が「業務に支障を来たさない範囲での兼業・副業まで禁止すべきではない」と判断することがあります。
これは、会社が定めた「全面禁止」を修正し、合理的な範囲で解釈すべきという合理的限定解釈によるものです。